著:海部健三
定価:本体1365円+税(本体1300円+税)
判型・体裁:四六判/144ページ
発行年月:2013年4月
ISBN978-4-378-03915-2
NDC487
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いま、ウナギの数が減り、絶滅が心配されている! どうしたら、ウナギをふやすことができるのか? それには、天然のウナギがどこで暮らし、何を食べ、どのように成長するかなど、その生態をくわしく知る必要がある。本書は、岡山県の旭川と児島湾でウナギの生活調査をした若き研究者の記録である。減少を続けるウナギを守るために、ウナギの研究を進めることはもちろん重要だ。しかし、それだけでなく、ウナギを守ることを通じて、水辺の環境を考え、水辺の自然再生につながるような仕組みを作り出していくこともまた、重要なのではないだろうか。水辺の自然再生を進めていくことにより、人間と水辺とのつながりをもう一度取りもどすこと、これこそが、ぼくたちウナギに関わる人間に求められていることではないかと考えている。
もくじ
第1章 ウナギを研究する
第1節 なぜウナギ研究なのか
1.ウナギの一生/2.減少するウナギ
第2節 ウナギの調査を始める
1.旭川と児島湾/2.ウナギを研究するということ/3.生活する/4.漁師さんに弟子入り/5.ウナギを捕る
第2章 ウナギ研究のいま
第1節 ウナギの産卵場調査
1.ヨーロッパウナギの産卵場調査/2.ニホンウナギの産卵場の発見/3.ウナギは「なぞの多い魚」なのか
第2節 ウナギ資源を守る
1.なぜウナギは減少しているのか/2.完全養殖の成功/3.完全養殖はウナギを救うのか
◆水の中の魚の位置を探る
第3章 研究の現場から
第1節 捕ったウナギは大切に
1.ウナギの解剖/2.耳石/3.耳石が語るもの-年齢/4.耳石が語るもの-川と海の間の移動
第2節 子どものウナギが育つ場所
1.ウナギにとって重要な場所/2.若い黄ウナギが育つ場所
第3節 海と川を行き来する魚
1.体内の塩分を調節する/2.海と川を行き来する/3.淡水と汽水、どちらが有利?/4.なぜ淡水に進入するのか
第4節 ウナギは何を食べている
1.エサを調べる方法/2.ウナギは何を食べている/3.効率よく食べ物を探す
第5節 大きな頭と小さな頭
第4章 これからのウナギ研究-ウナギを守るために-
第1節 ウナギを守るために
第2節 ウナギ漁
1.ウナギ漁/2.ウナギ漁は悪いことなのか/3.ウナギ漁の問題はどこにあるのか
第3節 ウナギの放流
1.ウナギの放流/2.生態系に与える影響
第4節 河川の環境とウナギ
1.河川環境の変化/2.失われるウナギの住み場所/3.水質の変化、生物の変化/4.河川の環境とウナギ
第5節 自然再生とウナギ
【著者】海部 健三(かいふけんぞう)
1973年、東京都生まれ。1997年に一橋大学社会学部を卒業後、社会人生活を経て2011年に東京大学農学生命科学研究科の博士課程を修了。同年、東京大学農学生命科学研究科 特任助教(執筆当時)。2012年より東アジア鰻資源協議会(EASEC)の事務局を担当。専門は保全生態学および水中生物音響学。河川や沿岸におけるニホンウナギの生態のほか、頭足類(イカやタコの仲間)の聴覚を研究している。2015年4月より、中央大学法学部助教(資源保全学)。