本のくわしい解説 |
廃墟となった村には、生き物の気配がまったくなかった!
さすらいの旅―続・生きのびるために |
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立ちつくすパヴァーナの耳に、かすかな風に運ばれて、か細い泣き声が聞こえてきた。子ねこだろうか。村はずれの家から聞こえてくるようだ。そっと近づき、入り口に立つ。家は屋根の一部がくずれ落ち、部屋の真ん中に瓦れきの山ができている。パヴァーナは、瓦れきごしに声のするほうを見た。子ねこではない。部屋のすみにいたのは、赤ん坊だった……。
たびかさなる戦乱で荒廃した、アフガニスタン。家族をさがして荒野をさすらう少女が旅の途中で見たものは?…… ◆この物語の主人公パヴァーナの2年前を描いた作品に、『生きのびるために』があります。 |
◆作者あとがきより
……1996年9月、タリバンが首都カブールを制圧し、女性に極端にきびしい制約をおしつけました。女性のための学校は閉鎖され、仕事を持つことも禁じられ、服装に関する規則も厳守させられました。書物は焼かれ、テレビはこわされ、すべての音楽が禁じられました。タリバンは多数の反対派の人びとを殺害しましたが、その中には普通の市民も多くいました。またたくさんの人びとが刑務所に入れられました。突然連れ去らせた人びともいます。その人たちがいったいどうなったか、家族にもおそらくわからないでしょう。 現在のアフガニスタンはもうタリバンに支配されているわけではありませんが、20年以上におよぶ戦争で、国土は非常に荒廃しました。橋、道路、発電所は破壊されました。きれいな飲み水が手に入るところはわずかしかありません。農地にはいろいろな勢力によって地雷が埋められ、食物を生産することができなくなってしまいました。その結果、飢えで死ぬ人、栄養失調がもとで病死する人も非常に多いのです。 将来のアフガニスタンにとって最も大きな希望は、学校が再開されたことです。今では男の子も女の子も、すべての子どもたちに教育をうける機会があります。しかし、あらゆるものが破壊され、国民がいちじるしい貧困におちいっているこの国が、学校を再建したり、生活の必需品を供給するためには、世界中の人びとからの助けが必要です。その助けがあってこそ、アフガニスタンの人びとは生活を立て直し、また新たな希望を持つことができるのです――◆デボラ・エリス |